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【臨床推論】失神の鑑別と対応:緊急度・重症度別レッドフラッグ|救急現場視点

    # 【臨床推論】失神の鑑別と対応:緊急度・重症度別レッドフラッグ|救急現場視点

    目次

    失神の病院前評価ゴール|「心原性を見落とさない」が貫く軸

    失神は脳の低灌流による一過性意識消失(TLOC:Transient Loss of Consciousness)で、救急隊員が現場で出会う頻度の高い主訴のひとつです。多くは反射性失神(血管迷走神経性・状況性等)で予後良好ですが、心原性失神は失神全体の10〜20%を占め、致死性不整脈・急性大動脈解離・肺血栓塞栓症を背景とする予後不良群であり、これを見落とさないことが病院前評価の最重要課題となります【標準的見解】(救急救命士標準テキスト第9版・失神章)。実際、JCS 2022 ガイドラインも「初期評価の結果,失神であると判断した場合には,心原性を見落とさないことが重要である」と明記しています【ガイドライン準拠】(JCS 2022 p.70)。

    救急隊員の臨床推論のゴール(失神主訴版)

    確定診断は救急隊員の役割ではありません。私たちのゴールは、次の4点を傷病者のために可能な限り無駄なく迅速に行うことです。

    1. 心原性を見落とさない(致死性不整脈・大動脈解離・PE を除外できないか常に確認)
    2. 必要な処置を実施する(地域MC指示下での静脈路確保・ブドウ糖投与等)
    3. 対応可能な専門設備を踏まえた根拠ある病院選定(CCU・救命センター・SCU 等)
    4. 病院交渉と申し送り(失神時の体位・前駆症状・接触後バイタル経時変化を優先伝達)

    このゴールに最短で届くために、本記事では 【臨床推論】救急隊員のための4ステップ思考プロセス入門 で示した 「想起 → 情報収集 → 評価 → 判断」 の4ステップ・ループ型フレームを、失神主訴で動かす形に組み直します。【現場経験・慣例】

    本記事では、ビギナー(☆)・標準課程(☆☆)・救急救命士(☆☆☆)でそれぞれ求められる知識が異なるため、レベル別に記載しています。

    下記ボタンを押下すると、選択したレベルまでの内容が積み上げ式で表示されます(☆☆ボタンなら☆と☆☆、☆☆☆ボタンなら全レベルが表示)。標準課程・救命士の見出しは個別にクリックして展開・折りたたみも可能です。

    レベル分けはあくまで目安です。標準課程の方が救命士向けの内容を読んでも、ビギナーの方が標準課程・救命士向けの内容を読んでも問題ありません。

    【本記事の到達目標】

    ☆ ビギナー:失神の定義と3分類の概要を理解し、心原性失神の存在を意識した初期観察ができる

    ☆☆ 標準課程:心原性示唆病歴を聴取し、観察優先フロー段階1〜2を実行して心原性除外の判断軸を持てる

    ☆☆☆ 救急救命士:12誘導ECG所見(VT/長短QT/WPW/Brugada)の把握 + 静脈路確保・ブドウ糖投与の MC 指示判断 + 救命センター/CCU 搬送選定までを実行できる

    あなたのレベルで表示を切り替え:

    この記事の前提条件

    本記事は 救急救命士・救急隊員(中級〜上級) を読者として想定しています。12誘導心電図の基本所見(VT・長短QT・WPW・Brugada 等の特徴的波形)、JCS / GCS、SAMPLE 聴取、血圧左右差測定はすでに身についていることを前提に進めます。

    搬送区分の判定・特定病院(CCU・救命センター・SCU 等)の選定基準・処置プロトコル(救急救命士の処置範囲拡大2項目を含む静脈路確保・ブドウ糖投与等)は、地域メディカルコントロール(MC)の指示・運用ルールに従うことが大原則です【参考情報・要確認】(消防庁「緊急度判定プロトコル Ver.3」)。本記事中で触れる対応判断は一般化された判断軸として読み、最終的な実施可否はご自身の地域プロトコルで必ず確認してください。

    用語の整理|意識障害・TLOC・失神の関係(本記事のスコープ)
    • 意識障害(広義):一過性のものと持続性のものを含む上位概念
    • 一過性意識消失(TLOC:Transient Loss of Consciousness):意識障害のうち、短時間(多くは数秒〜数分)で完全に回復するもの
    • 失神(syncope):TLOC のうち、脳低灌流が原因のもの ← 本記事のスコープ
    • 失神以外の TLOC:てんかん発作・心因性偽性失神(PPS)・外傷性意識消失・代謝性(低血糖)等
    本記事は失神を主対象としますが、病院前では「失神かどうか」の判定自体が鑑別の一部となるため、H2-3 では 非失神性 TLOC も「想起すべき病態」に含めて整理 します【ガイドライン準拠】(ACC/AHA/HRS 2017 p.e68-69 / ESC 2018 p.1890 / JCS 2022 p.70)。この「意識障害 ⊃ TLOC ⊃ 失神/失神以外」の階層は、救急隊向けにも図示されています【標準的見解】(望月礼子『救急隊版エマージェンシー臨床推論 救急脳のつくり方』第3回 一過性意識消失 図1・p.41)。

    地域差がある記述には【参考情報・要確認】を付与しています。

    失神から想起すべき病態

    「想起 → 情報収集 → 評価 → 判断」サイクルの最初のステップが 想起 です。傷病者接触前あるいは接触直後の数秒で、失神を背景に持つ病態の候補を頭の中に並べておく作業で、ここを丁寧に行うことが心原性を見落とさない第一歩になります。

    本記事では3つの切り口を重ねて想起します。① 疾患部位カテゴリ(系統別の網羅)、② 失神の3分類フレーム(病態生理由来の鑑別軸)、③ キラー疾患の優先度3分割 + 頻度高病態(緊急度の階層化)です。

    疾患部位カテゴリ|6系統で鑑別幅を確保する

    失神は単一臓器の疾患ではなく、「脳低灌流」または「非失神性 TLOC」を引き起こす多くの病態の共通出口として現れます。鑑別の網羅性を確保するため、まずは 疾患部位カテゴリ で6系統を押さえます【ガイドライン準拠】(ACC/AHA/HRS 2017 p.e69 非失神性 TLOC 分類 / ESC 2018 p.1899 鑑別系統別)。

    • 循環:致死性不整脈・急性大動脈解離・急性心筋梗塞・心タンポナーデ・大動脈弁狭窄症(重症)・腹部 AAA 破裂
    • 呼吸:肺血栓塞栓症(PE)・緊張性気胸
    • 神経:くも膜下出血(SAH)・脳幹梗塞/脳出血・てんかん発作後(Todd 麻痺含む)
    • 代謝:低血糖・副腎不全(アジソン危機)
    • 出血:消化管出血・異所性妊娠破裂
    • 中毒:CO 中毒・薬物中毒
    失神主訴で循環だけを疑うと、神経系の SAH・代謝系の低血糖・出血系の異所性妊娠破裂などを取りこぼします。6系統の枠を頭に置いておくことで、観察・問診の段階で 早期閉鎖バイアス(最初に思いついた疾患で結論を急ぐ偏り)を回避できます【現場経験・慣例】。

    失神の3分類フレーム|病態生理由来の鑑別軸

    疾患部位カテゴリと並行して、失神の3分類 を病院前鑑別フレームとして動かします。これは AIUEOTIPS のような語呂ではなく、ESC 2018 ガイドラインで病態生理学的に整理された分類で、各分類ごとに病院前で取得できる鑑別ポイントが対応しています【ガイドライン準拠】(ESC 2018 p.1906 / JCS 2022 p.70)。

    • 反射性失神:副交感神経優位による血圧低下・徐脈が原因。血管迷走神経性(情動・長時間立位・痛み等が誘因)/ 状況性(咳・排尿・排便・嚥下等が誘因)/ 頸動脈洞性。多くは予後良好。
    • 起立性低血圧による失神:立位への姿勢変化で収縮期血圧が低下することによる失神。薬剤性(降圧薬・利尿薬・α遮断薬)/ 自律神経障害(糖尿病・パーキンソン病等)/ 容量喪失(脱水・出血)が背景。
    • 心原性失神:不整脈性(VF/VT/Long QT/Brugada/WPW 等)または器質的(AMI・大動脈解離・PE・重症 AS・心タンポナーデ等)。失神全体の 10〜20% を占め、予後不良群【標準的見解】(救急救命士標準テキスト第9版 失神章)。
    なお、失神(脳低灌流による TLOC)と、非失神性 TLOC の代表であるてんかん発作は、意識回復の経過 で鑑別の当たりをつけられます。失神は短時間で自然かつ完全に回復するのに対し、てんかん発作後は意識回復まで分単位以上を要し、回復が遷延するのが特徴です【標準的見解】(望月礼子『救急隊版エマージェンシー臨床推論 救急脳のつくり方』第3回 一過性意識消失 図2・p.42)。目撃者から回復の速さ・けいれんや眼球偏位の有無・発作後の麻痺の有無を聴取することが、失神とてんかんの鑑別に直結します。
    ☆☆ 標準課程 ☆☆ 標準課程|3分類を「動かす」病院前鑑別ポイント

    3分類は知識として暗記するだけでは現場で動きません。各分類の典型像を持ち、観察・問診で得られた所見を3分類のいずれに引き寄せるかを意識します。

    • 反射性失神を示唆する所見:直前の不快な視覚刺激・痛み・長時間立位・暑熱環境などの誘因が明確 / 蒼白・発汗・悪心嘔吐の前駆症状 / 心疾患既往なし【ガイドライン準拠】(ESC 2018 p.1906)
    • 起立性低血圧を示唆する所見:立位中または立位後の発症 / 食後・労作後 / 降圧薬・利尿薬・α遮断薬の服用歴【ガイドライン準拠】(ESC 2018 p.1906)
    • 心原性失神を示唆する所見:労作中・仰臥位での失神 / 突然動悸→失神 / 前駆症状なしまたは <10秒 / 構造的心疾患既往(低 LVEF・MI 既往)/ 若年(<50歳)SCD 家族歴【ガイドライン準拠】(ACC/AHA/HRS 2017 p.e73 Table 4 / ESC 2018 p.1908 Table 6)
    各所見の詳細は H2-4 のレッドフラッグマトリクスで整理します。病院前では 「分類できなければ心原性として扱う」 が安全側の判断です。

    キラー疾患の優先度3分割 + 頻度高病態

    3分類で大枠を捉えた次に、「除外できないもの順」 に並べたキラー疾患を3層で押さえます。「分単位で対応しなければ致死的か」「時間単位で対応必要か」「見逃さず適切な医療機関へ繋ぐべきか」の3階層です。

    超緊急(分単位・即搬送・即介入)

    • 致死性不整脈(VF/VT/Long QT/Brugada/WPW)
    • 急性大動脈解離(最大 13% で失神を伴う【ガイドライン準拠】ACC/AHA/HRS 2017 p.e101)
    • 肺血栓塞栓症(PE)(高齢者の初発失神では PE が背景である割合が高い【ガイドライン準拠】ACC/AHA/HRS 2017 p.e101)
    高緊急(時間単位・迅速な医療機関選定)
    • 急性心筋梗塞(AMI)
    • くも膜下出血(SAH)
    • 心タンポナーデ
    • 大動脈弁狭窄症(重症)
    緊急(見逃さず適切な医療機関へ)
    • 脳幹梗塞・脳出血(SAH 以外)/ 低血糖(非失神性 TLOC)/ 消化管出血 / 異所性妊娠破裂 / CO 中毒・薬物中毒 / 腹部 AAA 破裂 / アナフィラキシー
    • 緊張性気胸 / 副腎不全(アジソン危機)【参考情報・要確認】(Tier S/A/C いずれも失神章に直接記述なし・救急医学一般の標準的知識として「想起の網羅性確保枠」に含める・要追加確認)
    • Todd 麻痺(てんかん発作後の一過性麻痺)【標準的見解】(第3回 一過性意識消失 p.47 FOCUS:てんかん発作後に一過性の麻痺を認めることがあると明記)
    ☆☆☆ 救命士 ☆☆☆ 救命士|超緊急キラー疾患の12誘導所見と遺伝性不整脈

    12誘導心電図を取得できる場面(救急救命士による救急救命処置の処置範囲・地域 MC 指示下)では、致死性不整脈に直結する以下の所見を確認します【ガイドライン準拠】(ACC/AHA/HRS 2017 p.e71 / ESC 2018 p.1903 不整脈性失神確定基準)。

    • VT(心室頻拍):幅広 QRS の連続 / 心拍数 100 bpm 超
    • Long QT 症候群:QTc > 480 ms(自動計測で確認)
    • Brugada 症候群:右側胸部誘導(V1-V3)の ST 上昇 + 右脚ブロック様波形
    • WPW 症候群:短縮 PR + δ 波
    家族歴の聴取で 若年(<50歳)の SCD(突然心臓死)家族歴 が確認されれば、遺伝性不整脈疾患(Long QT・Brugada・HCM 等)の可能性が高まり、12誘導で異常を捕捉できなくても CCU 搬送の判断材料になります【ガイドライン準拠】(ESC 2018 p.1908 Table 6 小項目)。

    頻度高病態(早期閉鎖バイアス回避の別枠)

    キラー疾患に意識が向くと、頻度の高い反射性失神を「予後が良いから」と軽視してしまいがちですが、現場で出会う失神の多くは以下のいずれかです。これを別枠で常に頭に置くことが、診断の片寄りを防ぎます【ガイドライン準拠】(ESC 2018 p.1906 / ACC/AHA/HRS 2017 p.e73)。

    • 反射性血管迷走神経性失神:副交感優位 → 血圧低下・徐脈。前駆症状あり・蘇生回復速い・心疾患なし
    • 起立性低血圧による失神:立位中/後・食後・薬剤性
    • 状況性失神:咳嗽・排尿・排便・嚥下が誘因
    ここまでで3つの切り口(疾患部位 / 3分類 / 優先度3分割 + 頻度高病態)を重ねて想起しました。次の H2-4 では、これらの病態を 観察 → 評価 → 判断 につなげるため、ESC 2018 高リスク特徴と心原性示唆病歴を 病院前活動の所作(① 問診 / ② フィジカルアセスメント / ③ バイタル・資器材)の3区分マトリクス で整理します。

    レッドフラッグ × 失神フレーム マトリクス|病院前活動所作で再配置

    ESC 2018 ガイドライン Table 6(p.1908)の高/低リスク特徴と、ACC/AHA/HRS 2017 ガイドライン Table 4(p.e73)の心原性示唆病歴を、病院前活動の所作で再配置します。

    医学的整理軸(発症様式・性状・随伴症状・既往/服薬・経時変化・誘因/状況)としての分類は教科書としては優れていますが、現場の所作(聴く → 見る・触れる → 測る)と対応が取れていません。本記事では同じ情報を ① 問診(聴く)/ ② フィジカルアセスメント(見る・触れる・聴診)/ ③ バイタル・資器材(測る) の3区分で再配置し、現場フローに沿って取得・記憶しやすい形にします。

    ESC Table 6 の階層は、各行末に ★大項目(単独で高リスク)/ ☆小項目(構造的心疾患または12誘導 ECG 異常との合併で高リスク化)の表記で保持します【ガイドライン準拠】(ESC 2018 p.1908 Table 6 / ACC/AHA/HRS 2017 p.e73 Table 4)。

    ① 問診(聴く)|状況・前駆・既往・薬歴・家族歴

    最初に取得できる情報源は問診(状況聴取・SAMPLE)です。傷病者本人または目撃者から、失神を取り巻く以下の所見を聴取します。

    観察項目該当所見強く疑う病態失神3分類ESC Table 6
    失神時の体位仰臥位での失神致死性不整脈心原性★大項目
    失神時の状況労作中の失神AMI / 重症 AS / 致死性不整脈心原性★大項目
    前駆症状突然動悸 → 失神致死性不整脈心原性★大項目
    前駆症状なしまたは <10秒心原性(構造的心疾患合併で高リスク)心原性☆小項目
    随伴症状(自覚)胸背部痛急性大動脈解離心原性(器質的)★大項目(新規発症胸部不快感)
    随伴症状(自覚)突発性激痛頭痛くも膜下出血(SAH)神経(非失神性 TLOC)★大項目(頭痛)
    随伴症状(自覚)呼吸困難肺血栓塞栓症(PE)/ 緊張性気胸心原性(器質的)/ 呼吸★大項目(息切れ)
    随伴症状(自覚)腹痛腹部 AAA 破裂 / 異所性妊娠破裂起立性(容量喪失)★大項目(腹痛)
    既往歴構造的心疾患・低 LVEF・MI 既往心原性失神の前提条件心原性★既往大項目
    家族歴若年(<50歳)SCD 家族歴遺伝性不整脈(LQT/Brugada/HCM)心原性☆小項目
    既往薬抗不整脈薬・QT 延長薬薬剤性 QT 延長 → 致死性不整脈心原性(要聴取)
    既往薬降圧薬・利尿薬・α遮断薬起立性低血圧起立性(要聴取)
    誘因咳・排尿・排便・嚥下状況性失神反射性(頻度高病態)
    これらの随伴症状とキラー疾患の対応は、救急隊向けの二次元鑑別リストとしても整理されています(冷汗・胸背部痛 → 急性大動脈解離、呼吸困難 → 肺血栓塞栓症、冷汗・胸痛 → 急性心筋梗塞、動悸 → 致死性不整脈、既往・徐脈 → 大動脈弁狭窄症、頭痛・嘔吐 → くも膜下出血)【標準的見解】(第3回 一過性意識消失 図4・p.44)。意識があるうちにこれらのレッドフラッグを迅速に聞き取り、病院連絡へ反映することが搬送先選定を左右します。
    ☆☆ 標準課程 ☆☆ 標準課程|問診で必ず聴取する5項目(心原性示唆コア)

    下記5項目は心原性失神の高リスクを示唆するコア聴取項目です【ガイドライン準拠】(ACC/AHA/HRS 2017 p.e73 Table 4 / ESC 2018 p.1908 Table 6)。

    1. 失神時の体位(仰臥位での失神)
    2. 失神時の状況(労作中の失神)
    3. 前駆症状の有無と長さ(突然動悸 → 失神 / 前駆なしまたは <10秒)
    4. 構造的心疾患の既往(低 LVEF・MI 既往)
    5. 若年 SCD 家族歴
    このうち1つでも陽性なら、観察優先フロー段階1での 「心原性として扱う」 判断軸に倒します。

    ② フィジカルアセスメント(見る・触れる・聴診)|身体所見

    問診と並行して、視診・触診・聴診で取れる所見を確認します。資器材を使わずに5感で取得できるため、接触30秒以内の段階1で大半を捕捉できます。

    観察項目該当所見強く疑う病態失神3分類
    顔色蒼白・チアノーゼ循環不全 / ショック心原性(器質的)/ 起立性
    発汗冷汗心原性 / 反射性(前駆として)心原性 / 反射性
    嗄声反回神経麻痺所見急性大動脈解離(弓部・近位部)心原性(器質的)
    頸静脈怒張心タンポナーデ / PE / 緊張性気胸心原性(器質的)/ 呼吸
    呼吸様式起坐呼吸PE / 心不全心原性(器質的)/ 呼吸
    気管偏位緊張性気胸【参考情報・要確認】呼吸
    呼吸音左右差・減弱緊張性気胸 / PE呼吸
    心音(聴診時)収縮期駆出性雑音重症大動脈弁狭窄症心原性(器質的)
    腹部拍動性腫瘤腹部 AAA 破裂起立性(容量喪失)
    皮膚蕁麻疹・粘膜浮腫アナフィラキシー起立性(容量喪失)
    口腔舌咬傷てんかん発作(非失神性 TLOC)(3分類外)
    神経所見片麻痺・構音障害・複視脳幹梗塞・脳出血 / Todd 麻痺神経(非失神性 TLOC)

    ③ バイタル・資器材(測る)|数値で得る所見と継続観察

    最後に資器材を用いて取得するバイタルです。段階2(〜2分)から段階5(搬送中〜引継ぎ)にかけて、初期値と経時変化の両方 を取得します。経時変化は単点では捕捉できない進行性病態(大動脈解離・PE・消化管出血)の早期察知に直結します。

    観察項目該当所見強く疑う病態失神3分類
    血圧(左右上肢差)収縮期 ≥20 mmHg 差急性大動脈解離心原性(器質的)
    血圧(絶対値)収縮期 <90 mmHgショック・容量喪失起立性 / 心原性
    血圧(起立試験)立位で収縮期 ≥20 mmHg 低下起立性低血圧起立性
    心拍持続性頻脈(>120 bpm)PE / 容量喪失 / 致死性不整脈心原性 / 起立性
    心拍徐脈(<50 bpm)房室ブロック / 反射性失神心原性 / 反射性
    SpO2<94%(安静時)PE / 心不全 / 緊張性気胸心原性(器質的)/ 呼吸
    体温高体温(敗血症)/ 低体温容量喪失 / 中毒起立性
    血糖<70 mg/dL低血糖(非失神性 TLOC)(3分類外)
    経時変化接触時 → 5分後 → 搬送中で意識/血圧/心電図が悪化進行性病態(解離・PE・出血)心原性 / 起立性
    ☆☆☆ 救命士 ☆☆☆ 救命士|12誘導 ECG 所見(致死性不整脈の確定/示唆基準)

    救急救命士が地域 MC 指示下で12誘導 ECG を取得できる場面では、以下の所見が 致死性不整脈の確定または高リスク を示します【ガイドライン準拠】(ACC/AHA/HRS 2017 p.e71 Table 5 / ESC 2018 p.1903 不整脈性失神確定基準)。

    所見示唆する病態病院前判断
    持続性 VT(幅広 QRS の連続・心拍 >100 bpm)心室頻拍CCU 搬送・除細動準備
    Mobitz II 型房室ブロック・完全房室ブロック高度徐脈性失神CCU 搬送
    QTc >480 msLong QT 症候群CCU 搬送
    V1-V3 の ST 上昇(coved 型)+ 右脚ブロック様波形Brugada 症候群CCU 搬送
    短縮 PR + δ 波WPW 症候群CCU 搬送
    急性虚血所見(ST 上昇・新規 LBBB)AMI に伴う失神救命センター/CCU 搬送
    12誘導で異常が捕捉できなくても、問診で 若年 SCD 家族歴 や 構造的心疾患既往 が確認されれば遺伝性不整脈疾患・心原性失神を排除できないため、保留 → 病院判断に委ねる搬送先選定(CCU 含む)が妥当です【参考情報・要確認】(地域 MC 指示に従う)。

    補足|判別を要する病態(第9版独自言及枠)

    救急救命士標準テキスト第9版の失神章には、Tier S/A ガイドラインに直接記述のない以下の病態が「判別を要する病態」として整理されています。3区分マトリクスに完全には収まらないため、独立した補足枠で押さえておきます【標準的見解】(救急救命士標準テキスト第9版 失神章)。

    • 鎖骨下動脈盗血症候群:患側の腕を激しく使った直後の椎骨動脈逆流による脳幹部血流減少 → 失神。問診(患側上肢の労作後)+ バイタル(左右上肢血圧差)で示唆
    • 過換気症候群:PaCO2 低下による脳血管収縮 → 失神様症状。フィジカル(呼吸数増加・口周りや手指のしびれ・テタニー様症状)で示唆。第9版では「失神の一種とすることもできる」とされる
    • 解離性昏迷:精神的要因による意識消失で、急激発症時は失神に類似。フィジカル(瞳孔反射保持・閉眼への抵抗)で示唆
    これらは病院前で確定する性質の病態ではなく、頻度の高い失神を除外する過程で「他に該当する所見がない」場合に想起する 性格のものです。
    ☆☆☆ 救命士 ☆☆☆ 救命士|くも膜下出血と心原性失神の関連

    くも膜下出血は、過度のストレス(カテコラミン上昇)から たこつぼ型心筋症(心筋障害)を引き起こし、心原性の循環不全を経て一過性意識消失に至ることがあります。また、くも膜下出血でも心電図に ST 上昇などの異常を呈することがあり、12誘導で虚血様変化を認めても頭蓋内疾患を否定できません。意識消失の傷病者では、頭痛・嘔吐などのくも膜下出血のレッドフラッグも併せて確認します【標準的見解】(第3回 一過性意識消失 p.48「さらに深く知りたい人へ」)。

    ここまでで「想起 → 情報収集」のフレームが揃いました。次の H2-5 以降では傷病者接触後の「評価 → 判断」フェーズに入り、第一印象と初期評価から始めて、動的サイクルで観察優先フローを回していきます。

    第一印象と初期評価|失神後の CPA 移行リスクを最優先除外

    傷病者接触後の最初の数秒から数十秒は、失神後に CPA(心肺停止)へ移行するリスクを見落とさない ための最重要時間帯です。心原性失神のうち致死性不整脈・急性大動脈解離・肺血栓塞栓症は、いずれも接触時点では意識が戻っていても、その後数分以内に状態急変する可能性を持ちます。本章では H2-6 の動的サイクル(観察優先フロー)に入る前段として、ファーストルック(数秒)→ 初期評価(ABCDE)→ 消防庁プロトコル赤1所見の即時確認 の3段重ねで「想起した病態を生理学的異常で裏付ける」工程を示します。

    ファーストルック(数秒)|全身像で重症度の当たりをつける

    接触の瞬間に5感で取得する所見です。資器材を当てる前の数秒で、傷病者の重症度におおよその当たりをつけます【現場経験・慣例】。

    • 意識:覚醒しているか(呼びかけ反応・開眼)・JCS の桁数で大まかな深度
    • 呼吸:呼吸の有無・努力呼吸(鼻翼呼吸・陥没呼吸・起坐位)の有無
    • 顔色:蒼白・チアノーゼ・冷汗
    • 脈拍:橈骨動脈触知の可否・速さ・強さ・リズム
    失神後で意識が回復していても、顔色が蒼白で脈が弱い・速い・不整 であればショックや致死性不整脈の遷延を疑い、ABCDE の確認を加速します。逆に意識が明瞭で顔色が戻り、橈骨脈が整であれば、観察を慌てずに段階1〜2へ進められます。

    初期評価(ABCDE)|CPA 移行リスクを生理学的異常で裏付ける

    ファーストルックで「重症度の当たり」を付けた後、ABCDE の枠組みで生理学的異常を順に確認します。失神主訴では B(呼吸)/ C(循環)/ D(意識) に異常が出やすく、ここでの陽性所見は H2-6 段階1の判断材料に直結します。

    • A(気道):意識回復後の気道開通・嘔吐物による閉塞リスク(てんかん発作後・大量服薬例)
    • B(呼吸):呼吸数・SpO2 速読・呼吸音の左右差・努力呼吸 → PE / 緊張性気胸 / 心不全
    • C(循環):橈骨脈の触知・血圧速読・皮膚冷感 → ショック・大動脈解離・PE・心タンポナーデ
    • D(意識):JCS / GCS の経時変化 → 意識遷延または増悪なら 失神以外の病態(脳卒中・低血糖等) を疑う
    • E(体温・全身観察):体表温度・外傷痕(失神時転倒に伴う頭部・顔面打撲は救急搬送された失神傷病者の約17%で合併【標準的見解】第9版 失神章)
    失神後に CPA へ移行する可能性は、接触時の B/C/D 異常の重なりが多いほど高くなります。1所見でも陽性なら 「ロード&ゴー前提で観察を進める」 判断軸に倒します。

    消防庁プロトコル赤1所見|即時確認すべき3軸

    ABCDE と並行して、消防庁「緊急度判定プロトコル Ver.3」の 赤1所見(最重症・即時対応必要)を確認します。失神主訴で特に該当しやすいのは以下の3軸です【ガイドライン準拠】(消防庁プロトコル Ver.3 p.10)。

    • 呼吸 赤1:チアノーゼ / 過度の呼吸努力 / 上気道閉塞 / 呼吸音の左右差
    • 循環 赤1:ショックの徴候(収縮期血圧低下・皮膚蒼白冷感・脈触知不良・意識障害の重なり)
    • 意識 赤1:意識レベルが次第に増悪(接触時 JCS Ⅰ-3 → 5分後 JCS Ⅱ-10 等)
    赤1のいずれかが陽性なら、H2-7 の搬送区分判断では救命救急センター搬送が候補となります(地域 MC 指示に従う)【参考情報・要確認】。陰性の場合も観察を打ち切らず、H2-6 の段階2〜5 で経時変化を追います。意識回復後の 「いったん戻ったが再び低下する」 パターンは進行性病態(解離・PE・SAH・出血)の典型的経過として救急医学一般で広く認識されており、段階5(搬送中)まで意識経時変化を継続観察する根拠になります【現場経験・慣例】。

    観察優先フロー|動的サイクル5段階で「想起→情報収集→評価→判断」を回す

    H2-5 で第一印象と初期評価を済ませたら、ここから先は 観察・問診・処置を時間軸で5段階に分け、各段階で「想起→情報収集→評価→判断」サイクルを回す動的フロー に切り替えます。「全部取ってから判断する」型は、心原性失神の急変リスクと相性が悪いため採用しません【現場経験・慣例】。1所見が陽性に振れたら、その時点で次の情報収集・判断に進むことが本フローの設計原理です。

    各段階の所要時間は目安です。傷病者の状態(意識回復の有無・バイタル不安定の程度)と現場環境(隊員数・接触場所・搬送距離)で前後します。

    段階1(〜30秒・観察のみ)|H2-5 の延長で「心原性として扱うか」を仮判断

    H2-5 で取得したファーストルック・ABCDE・赤1所見をもとに、「心原性として扱うか/扱わないか」 の仮判断を置きます。この判断は確定ではなく、以降の段階で随時上書きされる 作業仮説 です。

    • 心原性として扱う方に倒す陽性所見:仰臥位/労作中の失神 / 突然動悸前駆 / 構造的心疾患既往 / 若年 SCD 家族歴 / 顔色蒼白+脈不整 / 赤1所見いずれか陽性
    • 反射性・起立性に寄せられる所見:明確な誘因(情動・痛み・長時間立位・咳/排尿/排便/嚥下・立位後)/ 蒼白+発汗+悪心の前駆 / 蘇生回復速い / 心疾患既往なし
    「分類できなければ心原性として扱う」 を初期値とし、段階2以降で除外可能な所見が揃ったら寄せ直します。

    段階2(〜2分・仮説検証)|資器材で数値所見を追加し、心原性仮説を裏付けまたは棄却

    段階1の作業仮説を、資器材で取得できる数値所見 で検証します。1項目ずつ「取って→評価→次へ」を回し、心原性示唆所見が積み重なれば搬送先選定(H2-7)の判断を前倒しします。

    • 血圧(左右上肢差・絶対値・起立試験):左右差≥20 mmHg → 急性大動脈解離 / 収縮期<90 → ショック・容量喪失 / 立位で≥20 mmHg 低下 → 起立性低血圧
    • SpO2:<94%(安静時) → PE / 心不全 / 緊張性気胸
    • 血糖:<70 mg/dL → 低血糖(非失神性 TLOC・段階3 ブドウ糖投与の適応判断へ)
    • 体温:高体温(敗血症)/ 低体温(容量喪失・中毒)【現場経験・慣例】(救急医学一般の標準的な体温異常評価枠)
    • 瞳孔:左右差・対光反射消失 → 脳幹病変・薬物中毒
    ☆☆ 標準課程 ☆☆ 標準課程|段階1〜2 で「心原性除外」の判断軸を組み立てる

    段階1〜2 で取れる所見の組み合わせから、心原性失神を 積極的に除外 できるかを判定します。除外できない限り「心原性として扱う」を維持するのが安全側です【ガイドライン準拠】(ESC 2018 p.1906)。

    • 積極的に除外できる:明確な誘因あり + 前駆症状あり + 心疾患既往なし + バイタル正常化 + 経時変化で悪化なし
    • 除外できない:上記いずれかが欠ける / 段階1で心原性陽性所見が1つでも残る / バイタル経時悪化
    「除外できない」場合は、H2-7 の搬送区分判断で 救命救急センターまたは CCU を候補に含める 方向で動きます(地域 MC 指示前提)。

    段階3(処置範囲拡大2項目の判断・地域 MC 指示下)|救急救命士領域

    救急救命士が地域 MC 指示下で実施できる 処置範囲拡大2項目(静脈路確保・ブドウ糖投与) の適応を判断する段階です。標準課程の救急隊員はこの段階を担当しないため、段階4 へ進みます。

    ☆☆☆ 救命士 ☆☆☆ 救命士|静脈路確保・ブドウ糖投与・12誘導 ECG の MC 指示判断
    • 静脈路確保:ショック徴候(収縮期<90・脈触知不良)/ 重度の容量喪失(消化管出血・異所性妊娠破裂示唆)/ 致死性不整脈で除細動準備が必要な場面で、地域 MC 指示下で確保
    • ブドウ糖投与:段階2 で血糖 <70 mg/dL が確認され、低血糖が意識障害の原因と判断される場合、地域 MC 指示下で投与
    • 12誘導 ECG 取得:心原性失神の高リスクサイン(労作中/仰臥位失神・突然動悸前駆・構造的心疾患既往・SCD 家族歴)が段階1〜2 で陽性なら、可能な限り段階3 までに取得。H2-4 の③バイタル・資器材で示した致死性不整脈の所見(VT・QTc>480ms・Brugada・WPW・急性虚血)を確認し、陽性なら CCU/救命センター搬送を H2-7 へ繋ぐ
    これらの実施基準・指示要請の手順は地域 MC のプロトコルに従ってください【参考情報・要確認】。

    段階4(〜5分・並行収集)|状況評価・問診・SAMPLE で「想起」の精度を上げる

    接触初期は処置とバイタル取得が優先されるため、状況評価と詳細な問診は段階4 でまとめて深掘りします。ここで取得する情報は H2-4 の3区分マトリクス(特に ① 問診)に直結します。

    • 状況評価:失神時の体位・場所・直前の行動・目撃者証言・転倒の有無と打撲部位
    • SAMPLE 聴取:症状(前駆症状の有無と持続時間)・アレルギー・服薬(抗不整脈薬・QT 延長薬・降圧薬・利尿薬・α遮断薬)・既往歴(構造的心疾患・低 LVEF・MI 既往)・最終食事/排泄・関連事象
    • 家族歴:若年(<50歳)SCD 家族歴(遺伝性不整脈疾患の手掛かり・段階2 で陰性でも CCU 搬送の判断材料)
    ここで C-1 救急救命士標準テキスト第9版の 判別の鉄則 が活きます【標準的見解】。

    高度の徐脈や頻脈がなく、脈がしっかり触知できるにもかかわらず意識障害が遷延している場合には、失神以外の病態を疑う

    つまり、段階2 でバイタルが概ね正常範囲に戻っているのに意識障害が続いているなら、失神ではなく脳卒中(脳幹梗塞・SAH)・低血糖・代謝性昏睡・薬物中毒・てんかん発作後 などの非失神性 TLOC を再想起します。

    段階5(搬送中〜引継ぎ)|経時変化の追跡と病院前判断のアップデート

    搬送中は 意識・心電図モニタ・血圧の経時変化 を追い続けます。段階1〜4 で組み立てた仮説は、ここで再評価されるべきものです。

    • 意識の再低下:進行性病態(解離・PE・SAH・脳幹病変・出血)の典型サイン → 搬送先のグレードアップを病院に交渉【参考情報・要確認】
    • 血圧の経時低下:容量喪失(消化管出血・AAA 破裂・異所性妊娠破裂)/ 解離の進展 / PE の悪化
    • 心電図モニタ上の不整脈出現:致死性不整脈の遷延 → 除細動準備・CCU 適応に倒す
    引継ぎ時には、接触時バイタル → 段階2/段階5 のバイタル経時変化 を必ず時系列で伝えることで、病院側の初期診療(モニタ・採血・画像)の優先順位付けに直結します(詳細は H2-7)。

    対応判断|搬送区分・特定病院選定・申し送り

    H2-6 の動的サイクルで蓄積された所見をもとに、搬送区分の決定 → 特定病院の選定 → 病院交渉 → 申し送り の順で「判断」フェーズを進めます。地域 MC の指示・運用ルールが最終決定権を持つ前提で、本章では一般化された判断軸のみ示します【参考情報・要確認】。

    搬送区分と特定病院選定|赤2因子に倒した時の搬送先候補

    消防庁「緊急度判定プロトコル Ver.3」では、失神主訴に関連する赤2因子(重症度が高い2次補足因子)の合併で 救命救急センターまたは特定機能病院(CCU 等) が搬送先候補として示されています【ガイドライン準拠】(消防庁プロトコル Ver.3 p.14・p.18)。

    • 心原性の胸痛合併 → 救命救急センター or CCU(p.14)
    • 致死性不整脈の病歴 → 救命救急センター or CCU(p.14)
    • 12誘導 ECG 上の不整脈(VT 等) → 救命救急センター or CCU(p.18)
    • 突発性激痛頭痛+意識消失 → 脳卒中対応可能な救命救急センター or 脳卒中ケアユニット(SCU)【参考情報・要確認】(Tier S/A の失神章には直接の搬送先指定なし・救急医学一般の標準的判断軸として記載・地域 MC のプロトコル・受入要請応諾状況に従う)
    これらはあくまで判断軸であり、最終的な搬送先は地域 MC 指示・受入要請応諾状況・搬送距離で確定します【参考情報・要確認】。詳細手順は所属地域の搬送ルールに従ってください。

    高リスク失神患者の入院推奨|病院側の判断軸(救急隊員領域外だが理解しておく)

    病院前評価で「高リスク失神」と判定された傷病者は、海外ガイドラインでも 入院または救急外来観察ユニットでの集中評価が推奨 されています。救急隊員の領域外ですが、病院交渉時の根拠として理解しておくと交渉力が上がります【ガイドライン準拠】+【参考情報・要確認】。

    • A-1 ACC/AHA/HRS 2017:失神を呈し重症の医学的状態を有する患者には病院評価と治療が推奨される(p.e74)
    • A-2 ESC 2018:高リスク特徴を持つ患者は失神ユニットまたは救急外来観察ユニットでの早期かつ集中的な評価、または入院が推奨される(p.1911)
    H2-4 の問診マトリクスで「★大項目」または「★既往大項目」が陽性、あるいは H2-6 段階2/3 で 12誘導 ECG 上の致死性不整脈所見が確認された傷病者は、上記の「高リスク」に該当する可能性が高い対象です。

    申し送り|優先伝達3項目で病院初期診療の順序を整える

    病院到着後の初期診療(モニタ・採血・画像・専門科コール)の優先順位付けに直結するのが、救急隊員からの申し送りです。失神主訴では以下の3項目を 最優先で時系列に沿って 伝達します(詳細な聴取手順もあわせて押さえておきましょう)。

    1. 失神時の体位と状況:仰臥位 / 労作中 / 立位中 / 状況性誘因の有無(病院側の心原性疑い度の起点)
    2. 前駆症状の有無と長さ:突然動悸→失神 / 前駆なしまたは <10秒 / 蒼白・発汗・悪心の典型前駆あり(3分類のいずれに寄せるかの起点)
    3. 救急隊接触後のバイタル経時変化:接触時 → 段階2(〜2分)→ 段階5(搬送中)の意識・血圧・SpO2・心拍・心電図モニタ所見の推移(進行性病態の早期察知に直結)
    加えて、構造的心疾患既往・若年 SCD 家族歴・服薬歴(特に抗不整脈薬・QT 延長薬)は 聴取できた範囲で必ず添える ことで、病院側の鑑別の幅を狭めるサポートになります。

    まとめ|失神主訴を4ステップサイクルで動かす

    本記事では「心原性を見落とさない」を病院前評価のゴールに据え、失神主訴を 「想起 → 情報収集 → 評価 → 判断」4ステップ・ループ型 で動かす設計を示しました。

    • 想起:疾患部位カテゴリ(6系統)× 失神の3分類(反射性/起立性/心原性)× キラー疾患の優先度3分割(超緊急/高緊急/緊急)+ 頻度高病態の別枠で網羅性と緊急度を両立
    • 情報収集:H2-4 の3区分マトリクス(① 問診(聴く)/ ② フィジカルアセスメント(見る・触れる・聴診)/ ③ バイタル・資器材(測る・12誘導 ECG))を現場の所作に沿って取得
    • 評価:H2-5 の ABCDE + 消防庁プロトコル赤1所見で CPA 移行リスクを最優先除外、H2-6 段階1〜2 で心原性除外の判断軸を組み立て
    • 判断:H2-7 の搬送区分(救命センター/CCU/SCU)+ 申し送り3項目(失神時体位・前駆症状・接触後バイタル経時変化)で病院初期診療に繋ぐ
    現場で持ち帰れる3つのポイント
    1. 「心原性を見落とさない」が病院前ゴール:分類できなければ心原性として扱うのが安全側
    2. 労作中 / 仰臥位 / 突然動悸前駆 / 若年 SCD 家族歴 / 構造的心疾患既往 の5項目は必ず聴取(/ Table 心原性示唆コア)
    3. 12誘導 ECG 取得時 は VT / QTc>480ms / Brugada(V1-V3 ST 上昇+右脚ブロック様)/ WPW(短縮 PR + δ 波)/ 急性虚血所見を確認
    【到達目標チェック】
    ☆ 失神の定義と3分類の概要を理解し、心原性失神の存在を意識した初期観察ができますか?

    要点回答:失神は脳低灌流による一過性意識消失(TLOC)。反射性 / 起立性 / 心原性の3分類があり、心原性失神は失神全体の10〜20% を占める予後不良群。初期観察ではファーストルック(意識・呼吸・顔色・脈拍)と ABCDE で CPA 移行リスクを最優先除外し、心原性失神の存在を常に意識する。

    ☆☆ 心原性示唆病歴を聴取し、観察優先フロー段階1〜2を実行して心原性除外の判断軸を持てますか?

    要点回答:心原性示唆コア5項目(労作中 / 仰臥位 / 突然動悸前駆 / 若年(<50歳)SCD 家族歴 / 構造的心疾患既往)を SAMPLE で聴取。段階1(〜30秒・観察)で作業仮説を置き、段階2(〜2分・血圧左右差 / SpO2 / 血糖 / 体温 / 瞳孔)で数値所見を追加。「分類できなければ心原性として扱う」 を初期値に、除外できる所見が揃った時のみ反射性・起立性に寄せる。

    ☆☆☆ 12誘導 ECG 所見の把握 + 静脈路確保・ブドウ糖投与の判断 + 救命センター/CCU 搬送選定までを実行できますか?

    要点回答:12誘導 ECG で VT・Mobitz II / 完全房室ブロック・QTc>480ms・Brugada(V1-V3 ST 上昇+右脚ブロック様)・WPW(短縮 PR+δ 波)・急性虚血所見 を確認し、陽性なら CCU/救命救急センター搬送候補に倒す。段階3 の処置範囲拡大2項目(静脈路確保・ブドウ糖投与)はショック徴候 / 致死性不整脈 / 血糖<70 mg/dL の場面で地域 MC 指示下で実施。S-3 p.14・p.18 由来の赤2因子(心原性胸痛合併 / 致死性不整脈病歴 / 12誘導上の不整脈)合併時の搬送先選定までを判断できる。

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